感染夢 / 明野照葉

日本で勤めていた頃は、片道1時間ちょっとくらいの通勤時間があったのでよく本を呼んでいたのですが、NZに来てからは通勤時間がなくなってしまったので(一時期あったのですが、そのときも徒歩または自家用車だったので)あまり本を読まなくなってしまいました。もちろん、日本語の本を手に入れるのも大変だったこともあります。

ところが近年は電子書籍で入手できるようになり、日本にいた頃までとはいかないものの、また少し本を読むようになりました。

で、最近読了したのがこれ。

感染夢 (実業之日本社文庫)

感染夢 (実業之日本社文庫)

 

確か私が利用している電子書店で「ラストがすごい」みたいな特集で割引があったときに買っていたものだったと思います。

久しぶりのホラーもの、しかもラストがすごいの?と思いながら呼んでいたのですが……残念ながら私には期待はずれでした。

期待はずれの理由は、「感染」とついているのですが、だれかれかまわず「感染」するわけではないというところです。

以前、(PODCASTで聞いた)ラジオ番組で、映画監督であり脚本家、スクリプトドクターでもある三宅隆太さんが「恐怖」についての話をしていた際、怖い目にあう人が何かをやった人(簡単な例で言えばお地蔵さんを汚したとか壊したとか、何かの表紙に誰かに悪いことをしてしまったとか)だとあまり怖くなくなるという話をしていました。これは「そういうことをしなければこういうことは起こらない」と思えるためで、何も悪いことをしていない、ごく普通の人が恐怖体験に巻き込まれる方が「自分ももしかして……」という感じになって怖いとのこと。

この小説、「感染」というくらいだから、どんどんいろいろな人に感染する、それこそ「リング」のビデオみたいに広がっていくの?くらいに思っていたのですが、そんなことはありません。基本的にはある条件の人のみしか恐怖体験をしないので、ホラー的な恐怖よりも謎解きが先行してしまう感があります。

また、これは私の記憶違いでラストがすごい本!みたいな触れ込みではなかったのかもしれませんが、ラストもそれほどではなかったです。ごめんなさい。

不可解な現象に苛まれ、それの謎を解いていくという、一種のミステリーとしてはそれなりにおもしろかったので、あまりホラー色が強いのはどうもねという人にも読みやすいのではないでしょうか?

この本より、今ネットでちょろっとみた「デッドストック」の第一話の方が怖かった……